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宇宙の95%は未知
宇宙観測によって、人類がこれまでに検出できている物質(通常の物質)は宇宙に占めるエネルギーの約5パーセントに過ぎないことが分かっています。残りの27パーセントの寄与がまだ発見されていない未知の素粒子(暗黒物質)、68パーセントが未知のエネルギー(暗黒エネルギー)だと考えられています。
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幽霊粒子、ニュートリノ
ニュートリノは「幽霊粒子」と呼ばれるほど非常に観測が難しく、質量 も他の粒子に比べとても軽いことがわかっています。 ニュートリノは未知の性質が多く、なぜものすごく軽いのか?ニュートリノでは物質と反物質の対称性は破れているのか?(=私達の宇宙が物質優勢であるのはニュートリノのおかげかもしれない)といった謎を解くために、世界中で様々なニュートリノ実験が行われています。これまで、小柴昌俊、梶田隆章の日本人2名がニュートリノ実験の成果でノーベル賞を受賞したこともあり、日本と縁が深い粒子でもあります。
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新粒子は長生き?
新粒子が電荷を持たず、長い寿命を持っている場合、検出器と反応せずにそのまま突き抜けてしまいます。そうなると、新粒子を捕らえることはできません。FASER実験では、陽子・陽子衝突で発生し、480m離れた場所で崩壊するほどの長い寿命をもつ新粒子の発見を目指しています。
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世界初、衝突型加速器ニュートリノの研究
我々は2018年にFASER実験の提案をし、2019年春にCERNに承認されました。その後、急ピッチで検出器の開発を進め、2020年秋にはFASER検出器を地上で組み上げ、2021年春に実験エリアにFASER検出器を設置しました。2021年秋にFASERν検出器を実験エリアに設置し、2022年春から始まるLHC Run3に合わせて実験を開始しました。2023年春には世界で初めて、衝突型加速器由来のニュートリノを観測しました。
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FASER実験
FASER(ForwArd Search ExpeRiment)(フェイザー)実験はこれまでに発見されていない新粒子を探索し、宇宙創成の謎に迫る実験です。2021年春にスイスのジュネーブにある欧州原子核研究機関(CERN)に検出器を設置しました。2022年に実験を開始し、大型ハドロン衝突型加速器(LHC: Large Hadron Collider)での陽子と陽子の衝突で作り出される新粒子を捕らえることを目指しています。さらにFASER実験の一部としてFASERν(フェイザーニュー)を開始しました。FASERνではFASER検出器の上流にニュートリノ検出器を設置し、LHCの陽子と陽子の衝突で作り出される高エネルギーのニュートリノ検出を目指しています。このホームページではFASER実験とFASERνにおける日本グループの活動について紹介します。
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FASER Japan
日本グループはFASER実験に初期から参画し、特に、音野らは新粒子探索のためシリコン検出器の使用を提案し、有賀(昭)・有賀(智)らは未知のエネルギー領域でのニュートリノ測定(FASERnu)を立案するなど、実験の立ち上げに貢献してきました。また、FASERnuの実験プロポーザル、最初の論文、および、LHCにおけるニュートリノ反応候補の初観測を報告した論文は日本グループを中心として執筆してきました。FASER実験の中枢を担うExecutive Boardにも参画しており、2022-2025年に本格的な実験でのLHC陽子陽子衝突に起因する未知粒子探索および高エネルギーニュートリノ測定に向けて検出器の準備・運用を牽引しています。